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クラウド間バックアップのメリット

バックアップ専用クラウドを使用することで、旧式のインフラストラクチャがもたらす性能、コスト、複雑さに関する課題をいかにして克服できるのかを理解することができます。

目次

バックアップの難題を解消する

あらゆるIT組織にとって、バックアップは最もストレスの多い作業のひとつです。複雑で、時間も労力もかかり、問題が生じることだってあります。その価値を実感できることはめったにありません。つまり、システム障害やデータロス、データセンターの閉鎖、ランサムウェア攻撃による封鎖といった大惨事が起こるまで、その価値が認識されることはないのです。こうしたことから、優れたバックアップは必須であり、極めて重要だと言えます。壊滅的なデータロスの被害を受けた企業の94%は存続できないとされ、バックアップがなければ、データロスは避けられません。

かつて、バックアップは比較的簡単な作業でした。クライアント・デバイスはひとつの建物内やローカル・ネットワーク上にあり、サーバーとストレージはクローゼットやデータセンターに設置されていました。企業が持つデータは、せいぜいギガバイト (GB) 単位や多くても数テラバイト (TB) であり、データ窃盗やランサムウェア攻撃はめったに起こりませんでした。当時、ほぼすべての企業がテープによるストレージ技術を採用していました。IT担当者は、データを安全に保管するうえで必要なアクセス権、スキル、ツール(多くの場合、ひとつのツール)をすべて備えていました。

現代では、さまざまな理由から事情が異なります。

  1. 私たちは急激なデータ増大に直面しています。2010年から2020年にかけて、世界全体で生成されるデータの量は1.2兆GB(1,200エクサバイト)から59兆GB(5,900エクサバイト)へと増加しました。多くの企業はペタバイト規模のデータをバックアップする必要性に迫られています。
  2. 企業はデータを世界中に移動させています。例えば、43%の企業は平均126TBのデータをリモートオフィスやエッジから社内で管理するデータセンターへと定期的に移動させています
  3. 規模を問わずほぼすべての企業が、ハイブリッド環境、マルチクラウド環境、およびマルチサイト型のオンプレミス・インフラストラクチャ環境を組み合わせて使用しています。85%の企業がクラウドファースト戦略を取っており、3社に1社がマルチクラウドを採用しています
  4. バックアップは破綻しています。一度もバックアップされたことのないデータは全体の14%に上り、データ復旧の58%は失敗に終わっています。つまり、停電やサイバー攻撃が生じたときに、保護されないまま放置されているビジネスデータや復元できないビジネスデータが存在するということです。
  5. データの完全性とデータアクセスに対する脅威は、もはや企業経営の一部となっています。世界全体で、64%の企業がこれまでに何らかのサイバー攻撃を経験しています
  6. 予算オーバーは当たり前。Pepperdataのレポートでは、「2020年には…クラウド利用率の上昇に伴い、42.6%の企業でクラウド支出が予算を上回った」とされ、「企業の3分の1は、クラウド予算が予想よりも20~40%上振れしたと回答している」と報告されています。

つまり、複雑に変化していく現代社会では、想定ミスが起こりやすくなっているのです。例えば、企業がパブリック・クラウドを採用し、データと作業負荷をそこへ移動させたものの、実際の性能やコストが当初の予想から乖離していたということは往々にしてあります。

その結果、「FinOps」と呼ばれる指針が登場し、最新技術(特にクラウド)が適正な料金で適切な機能と成果をもたらしているかを見極めようとする取り組みが進められています。現在、FinOpsのリーダーたちはITを取り巻くあらゆる側面を細かく精査し、この驚くほど複雑なマルチクラウドの世界でバックアップ分野にメスを入れ始めています。専門家にとって、これは何も驚くべきことではありません。企業は、予算オーバーやあまりに複雑なシステムの問題に折り合いをつけつつ、優れたバックアップ・ソリューションを確保する必要があることを理解しています。

バックアップに適したクラウド選び

こうした現状から私たちが導き出した結論として、データセットが急増していること、複雑で高コストのハイブリッド型マルチクラウド・インフラストラクチャが現在のスタンダードになりつつあること、セキュリティ面に問題があること、予算オーバーが当たり前であること、そしてバックアップが問題を引き起こしていることが挙げられます。

実際のところ、ハイブリッド型のマルチクラウド・インフラストラクチャが複雑なのは、データが数多くのプラットフォームと様々な場所に分散されているからです。中規模の企業ならば、いくつかの大陸に数百台のデバイスが散在し、そこにデータが保存されているかもしれません。そうしたデータをオンプレミスのひとつのテープ・ライブラリや、たとえテープでなくともオンプレミスのディスク・ストレージ・デバイスにバックアップする作業は、現実的とは言えません。

企業はこれまで、自社のデータセンターにバックアップ・プラットフォームを追加することで、こうした問題の解決を図ってきました。この手法では、確かに汎用的な方法でバックアップを実行できるものの、長い目で見ると非効率的で複雑であり、コストが増大するという問題がありました。その背景には、時間の経過と共に必要なストレージ容量とバックアップ頻度が増え、追加的な機能が必要とされることで、企業が多額の設備投資を余儀なくされるという現実があります。しかも、そうしたシステムはいずれ「旧式のアーキテクチャ」と呼ばれるようになります。

企業は、こうした問題をうまくかわしていく必要があります。そのひとつの方法が、クラウドファースト戦略です。新たに開発されているアプリケーションやサービスが企業のデータセンター内ではなく、ハイパースケール・パブリック・クラウド・プロバイダが提供するコンピューティング・インスタンスやストレージ・ボリュームに常駐していることからも分かるように、この流れはすでに始まっています。FinOpsチームは、これからはクラウドの時代であり、クラウドが最高のメリットを提供して数多くの要件を満たしてくれることを理解しています。

そうした要件のひとつがストレージであり、クラウド・ストレージは特にバックアップに適しています。現在、オンプレミスのテープ式バックアップを廃止して、クラウドを選ぶ企業が増えています。クラウドは数々の魅力的な特徴を備えており、そうした点からもバックアップ用途に適していると言えます。具体的には以下のような特徴が含まれます。

  • 基本的に即座に、いつでも利用できる拡張機能
  • 継続的なイノベーションと技術の刷新
  • 高水準の信頼性(ダウンタイムは年間わずか数秒)
  • オンプレミス型ストレージ・プラットフォームのライセンス料金を追加で支払うことなく利用できる豊富な機能セット
  • 幅広い要件に対応する合理的な性能
  • バックアップに最適なストレージタイプへの対応
  • バックアップ・ソフトウェア・ベンダーを含むサードパーティによるアクセスを可能にするAPI
  • 高価なハードウェアへの先行的な設備投資ではなく、使用した分だけ支払う料金体系

次にやって来るのが、企業がバックアップ用クラウドの導入を加速する段階です。これはすでに始まっており、多くの企業が業務の作業負荷をAmazonのEBSなどの高性能クラウド・ブロック・ストレージに移行したり、バックアップにAmazonのS3を使用したりしています。これも最初はうまく機能します。ところが、企業のバックアップデータが増え、復元の頻度が高くなり、作業負荷毎に異なる目標復旧地点 (RPO) を確立するようになると、クラウドへのバックアップが当初期待していた万能の解決策ではないことに気付く企業も出てきます。

なぜなら、クラウドの中には複雑で入り組んだ料金体系を採用しているサービスもあり、そのせいでクラウドの価値が損なわれているからです。

ある大手クラウド・プロバイダの料金体系を見てみると、1つのデータセンター領域に関して次のように書かれています。

  • 14のストレージ階層に基づく価格帯(データセットのサイズとオブジェクト数に基づく)
  • ミリ秒から半日までの幅広いRPO
  • リクエスト料金とデータ検索料金の85項目から成る料金表
  • 59種類のデータ転送料金
  • 管理と分析にかかる数十種類の手数料

すなわち、こうした料金モデルはほぼ理解不能であり、驚くほど管理が困難なのです。異なるRPOを持つ40~50のバックアップ作業を管理するとします。1つの階層やストレージ領域からデータを移動させる必要があり、GETまたはPUTのリクエスト毎に別途料金がかかり、管理や分析には追加料金も上乗せされます。バックアップデータが増えてニーズが変化するにつれ、コストはますます予測不能になり、手に負えない状況に陥って、結果的に予算オーバーを招き、経営陣を失望させます。

FinOpsチームはこうした問題にどう対処しているのでしょうか?多くの場合、FinOpsでは直観に頼らない手法を採用しています。マルチクラウド・インフラストラクチャの真の価値を理解したうえで、バックアップに適したストレージ専用クラウドを選んでいるのです。

確かに、多くの企業のIT部門は自力で対応しきれないほど複雑なシステムを抱えています。一方で、すべての作業負荷に対応できる万能なサーバーなど存在しないことを企業が理解しているのと同じように、FinOpsの専門家は、異なる運用要件に適したクラス最高のクラウド・サービスを選ぶにあたっては知恵が必要であり、特にバックアップに関しては、クラウドにも相性があることを知っています。

バックアップに最適なクラウドを選ぶことで、性能面、機能面、コスト面でのメリットがもたらされる可能性があります。バックアップ専用クラウドを通じて、FinOpsチームはコスト削減、コストの不透明感の緩和、予算オーバーの軽減を実現するための新たなツールを手にすることができます。

その内容を具体的に見ていきましょう。企業は、業務の作業負荷に対応するコンピューティングとストレージを備えた複数のクラウドを展開します。そうしたクラウド内でバックアップ・ソフトウェアを実行することで、バックアップデータをバックアップ専用クラウドに移動させることができます。なお、そのクラウドは適正な料金で、最適な特徴と機能を備えています。つまり、クラウド間バックアップを実現しているのはこのような企業なのです。

バックアップ・クラウドに求められる理想的な特徴は何でしょうか?

  1. 幅広いバックアップ・ソフトウェア、他のクラウド、オンプレミス・インフラストラクチャからのユニバーサル・アクセスを可能にする一般的なAPIへのオープンアクセスまたはサポート:例えば、S3は標準的なインターフェイスおよび通信プロトコルとして広く使用されており、広くアクセス可能です。S3対応のデータ・ストレージ・リポジトリなら、業務用のクラウドから独立して使用することができます。
  2. バックアップに必要な機能:オンデマンドでの大規模拡張、不変のオブジェクト・ロック、合理的な復旧性能、国内でのレプリケーションの自動化。
  3. 強力なセキュリティ対策:ランサムウェア対策、暗号化、強力なアクセス制御。
  4. 妥協のない復元性:99.99%以上のアップタイム。
  5. 合理化されたシンプルな料金体系:API料金やエグレス料金なし。
  6. 無限の拡張性:長期にわたるバックアップやアーカイブをペタバイト規模にまで拡張し、システム規模に応じた料金モデルにより、オンプレミスのバックアップ拡張にかかる費用をなくすことができます。
  7. 予測可能な性能:「最高12時間」などのRPO制限はなく、復旧サービスレベル契約の内容を御社の状況に合わせて調整できます。
  8. 移行の合理化:エグレス料金がかからないため、データ移行のコストパフォーマンスが改善されます。「サービスとしての移行」ソリューションとして利用できます。
  9. すぐにアクセス:データが異種のプラットフォームや物理メディアに閉じ込められていると、分析に使用できません。バックアップを集中管理し、そこから業務に役立つ洞察を引き出すことのできる企業には、大きなメリットがあります。

こうした特徴はすべてのクラウドに備わっているわけではありません。しかし、中には、バックアップのニーズに特化して設計されたクラウド・ソリューションを提供しているプロバイダも存在します。このような特徴があれば、FinOpsチームはストレージに代わる新たなツールを手に入れ、業務の成果とコストを最適化することができます。卓越したバックアップ用クラウドをベースに、企業はデータのセキュリティと可用性を損なうことなく、データ・ガバナンスとコンプライアンスを改善していくことができるはずです。また、それまでメインで使用してきたハイパースケール・パブリック・クラウドからデータを移動し、かつ現在のバックアップ・クラウドで完全なデータ・モビリティが確保されれば、自社のデータを他のクラウド・サービスでも使用することが可能になります。1社のプロバイダへの依存から脱却することで、企業は自社の要件に応じてインフラストラクチャを自在に調整する自由を手にすることができるのです。

Seagateは、FinOpsチームにバックアップに適したクラウドを提供することを目指しています。Seagate® Lyve Cloudなら、御社は新たな方法でクラウド間バックアップをスムーズに実現し、他のプラットフォームにありがちな性能、コスト、複雑さの問題をすべて解消することができます。

詳細は、www.seagate.com/services/cloud/storageでご確認ください。