監視

3 SANに最適なビデオ監視環境

目次

あらゆるビデオ監視システムに効率的で信頼できるデータ・ストレージが必要であることは言うまでもありません。だからと言って、ビデオ・システムを最適に機能させるために大規模な共有ネットワーク・ストレージが必要であるとも限りません。小~中規模のビデオ監視環境であれば、撮影、分析、録画に適した高性能のビデオ機器用NVRで十分対応できます。その一方で、ストレージ・エリア・ネットワーク (SAN) のインフラストラクチャを導入することで、必要とされるレベルの柔軟性と拡張性、保護性能を新たに実現できるケースもあります。

エンタープライズクラスの監視環境では、多数の高解像度カメラを配備し、データの保存期間も通常30~90日と長期に及ぶため、従来のNVRよりも耐久性と拡張性に優れたストレージ・ソリューションが必要です。そこで活躍するのが、SANです。これからその理由をご紹介いたします。

SANとは?

企業の監視システムが拡大していく過程で、通常のNVRソリューションの機能とコストパフォーマンスでは対応しきれない時期がやってきます。SANは耐久性の高いアーキテクチャを提供し、それを徐々に拡張していくことができるため、事業成長とカメラ技術の進歩を見据えて拡張の余地を残しておく必要のあるセキュリティ用途に最適です。

SANでは、エンタープライズレベルのセキュリティ環境において、ネットワーク・スイッチを通じてiSCSIやファイバチャネルの接続機能を使い、複数台の録画機器 (NVR) をひとつの共有ストレージ・ネットワークに統合することが可能です。録画とデータアクセスに関連するこうしたすべての作業をブロック単位で実行するため、録画機器は、SANから割り当てられたストレージをあたかも直接接続されている機器のような感覚で登録します。このようにして、その録画機器がファイルシステムを維持します。SANを使用することで、すべてのサーバーは共有リソースとしてストレージ・ネットワークにアクセスできるため、スピードと効率性、シンプルなデータ管理が実現されます。

監視インフラストラクチャが拡大しても、管理者はNVRネットワークのカメラを設計し直すことなく、ストレージ・システムや拡張ユニットを簡単に追加し、容量を増設することができます。SANのアーキテクチャは柔軟性が高いため、高度な作業なしにVMSソフトウェアを変更したり、ハードウェアをアップグレードしたりすることが可能です。また、SANシステムにより冗長性が高まるため、NVRのみのシンプルな環境でよく見られる単一障害点をなくすこともできます。

エンタープライズレベルの監視システムの展開例

SANアーキテクチャ

SANアーキテクチャを採用するお客様は、その形態も規模もさまざまです。SANの導入を検討すべき監視環境の例を3つご紹介いたします。

  1. カメラ台数の多い環境:この用途に該当するのは、一カ所や複数の場所に500台以上のカメラを設置しているような場合です。特筆すべき例として、ウォルマートが導入した「Missed Scan Detection」プログラムが挙げられます。ウォルマートがBusiness Insiderに明かしたところによると、このプログラムにより1,000店舗以上で「コンピュータビジョン技術を採用してレジ付近を監視し、万引きや窃盗を防止している」といいます。「Missed Scan Detection」監視プログラムでは、AI対応カメラを設置することで、レジでのスキャンミスや不正を特定し、異常があれば通知されるようになっています。そのため、ウォルマートの店舗全体で数万台ものカメラを使用し、ビデオデータをリアルタイムで録画して分析しています。
  2. 長期のデータ保存が求められる環境:こちらの用途では、カメラ台数は100~300台程度と中規模であるものの、規制順守のため長期にわたりデータを保存することが求められます。標準的な保存期間が30~90日間だとしたら、長期のデータ保存が求められる環境では、これが90~365日間に及びます。その一例が、ニューヨーク市警察 (NYPD) です。ニューヨーク市政府によると、NYPDは2017年に市内の20管区で勤務する1,300人の警察官に装着式のカメラを支給し、2019年2月には、制服を着用して市内を巡回するすべての警官にカメラ着用を拡大しました。市内全域で装着されているカメラの台数は、合計で約20,000台に上ります。ニューヨーク市警察ではすべての録画データを18ヶ月間にわたって保管しており、膨大なビデオ・ストレージ容量が必要とされます。
  3. データの高可用性が求められる環境:これに該当するのは、「年中無休の警備体制」を実現するため、常時稼働の監視システム環境が求められるミッションクリティカルな用途です。例えば、『Canadian Security』誌によると、トロント国際空港の警備システムでは、固定カメラとPTZビデオ監視用カメラを10,000台設置し、そのすべてに高度なビデオ・コンテンツ分析 (VCA) ソフトウェアを装備することで、1台のビデオ管理システムを通じてビデオ・ストリームをリアルタイムで分析しているといいます。こうしたシステムでは、ビデオ・ストリーミングとストレージの両方に絶えずアクセスする必要があります。

SAN HAネットワーク

ご紹介した3種類の監視環境はそれぞれ異なる特徴や要件を持っていますが、SANはそのすべてに対応するシステムとして、確かな方法で効果的にビデオ・ストレージを管理します。

おすすめのソリューション

SANストレージの選択肢は、実にさまざまです。そのため、企業は確かな実績を持つメーカーと提携することが重要です。その最たる例が、ビデオ監視専用のデータ保護およびデータ分析機器を提供するArxysと、自社のエンタープライズ・ストレージ・システムを通じて厳しい作業負荷と拡張性に対応するSeagate Technologyです。ArxysとSeagateはこのほど、大企業のビデオ監視環境に特化したSANストレージ製品を共同で開発しました。

具体的には、Seagate Exos X 5U84システムを搭載したArxysのDataX Prime X584Eソリューションは、一台の5Uエンクロージャで最大1.3ペタバイト (PB) のデータに対応します。Exos X 5U84システムを3台追加して合計4PBの容量にすることで、データの増大に容易に対応し、ソリューションを拡張することができます。高度なスループットと読取り/書込み機能、さらには99.99%の可用性を備えているため、要求の厳しいストリーミング環境に最適で、高いアクセス性と拡張性を発揮します。

また、Data X Prime X584Eソリューションは、SeagateのAdvanced Distributed Automatic Protection Technology (ADAPT) も搭載しています。これは、パラレル・アーキテクチャをベースに、インテリジェントな分析機能を採用し、システムに不具合が生じる前にその可能性を予測して対処する技術です。つまり、ADAPTによりデータを複数台のドライブに分散させ、より多くのリソースをリビルド用に割り当てておくことができます。これにより、リビルド時間を短縮でき、データが使用できなくなるリスクを軽減して、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが可能です。結果的に、ADAPTを使用することで、ディスク・ドライブのリビルド作業中における性能の低下を従来のRAIDソリューションと比べて最大95%抑えることができます。加えて、データ保護性能をさらに高めるため、Data X Prime X584EソリューションはSeagate Secureのサイバーセキュリティ機能も備えており、連邦情報処理標準と通商協定法のどちらの要件も満たします。

今後に備えて

データが複雑さを極める現代社会では、SANの導入を検討して、録画のスループットを高め、データ管理を簡素化し、将来を見据えて御社のシステムを強化することが重要です。御社の監視システムを最大限に活用するため、確かな技術力によって総所有コストの削減を実現するストレージ・パートナーを選びましょう。